レトロパソコン界のはぐれメタルスライム降臨
近年、レトロパソコンブームによって市場から在庫が一掃され、海外への持ち出しも止まらずどんどんレア化が進んでいる、x68000。
その中でも実質最強のモデル、x68000XVIを先月末に落札した。
今まで一台のパソコンに支払った額の最高を軽く更新してしまった。
今後この額以上でパソコンを買うことは無いだろう…
(メインパソコンはパーツ単位でアップグレードするため。よってパーツ単位であればもっと高額を支払うことも…いややっぱそれもないわ)
到着した本体の状態は、外装に傷あり、拡張スロットカバー一個欠品。
ジャンク品としてはまずまず。
出品者の動作確認では、スタンバイ状態にもならないということだったけど、一応電源コードをつないでみた。
背面の電源スイッチを入れると、正面のLEDが赤くなる筈だが反応なし。
あらかじめ仕入れていた情報通り、電源が死んでいるのだろう。
分解難易度がかなり高いらしいので、x68000XVI修理マニュアルを買っておいた。
BOOTHで電子版なら500円。
分解法はネット上だとデジカメがしょぼい時代のものしかなくて、写真が見づらい場合がほとんどで、解りづらい場所が結構あるため、写真が見やすいというだけでも買いだとおもう。
あとネジの場所と種類が書かれてるのも、ズボラにはありがたい。
筐体のかっこよさは21世紀でも通用するXVI、しかしその筐体デザインを実現するために構造は複雑怪奇、分解難易度は地獄級。
プラが劣化していて、いつ折れるか解らないという恐怖と戦いつつ、ようやく分解を終えた。
電源ユニットのフタを開けると…
コンデンサが一本残らず液を大量にはき出していたのである。
9821Apの電源もコンデンサが漏らしてたけど、あっちはちょっと茶色の液がくっついてる程度だったのに対し、XVIの電源は茶色の汁が至るところにこびりついてて、一目で死んでいると確信できる状態。
分解したパーツを見ながら、必要なコンデンサをリストアップして注文。
パーツ到着後、電源の修理にかかったが、ハンダがガビガビになっていてなかなか溶けない。
一カ所、レギュレーターらしきパーツの足がケセランパサランになっていたので、ハンダこてにハンダを付け、熱伝導率を上げてちょっとずつ溶かしては吸い取り線で吸いとった。
コンデンサはもちろん全交換。
エルナーロングライフ…ロングライフとはいったい
その他、トランスが特注品で、もし燃えると換えのパーツが手に入らないらしいので、両方取り外して、ショートしていないか確認後、足をIPAで掃除しておいた。
電源ケーブルも、一番たくさん漏らすコンデンサのすぐ下にあって大量に液をかぶっており、根元がギトギトだったので、全部外してIPAハミガキをしておいた。
磨き方が足りなかったらしく、ハンダがあまり乗らなかったが大丈夫だろうか。
コンデンサ、トランス、ケーブル、レギュレーターを付け直し、電源をON。
X68000の電源ユニットは、ATX電源と逆で、常時稼働状態になっていて、マザーボードからの信号でOFF状態に制御するらしい。
ので、何もつなげないで電源を入れるとファンが回り出す…らしいのだが微動だにせず。
結局電源の修理は不可能と判断し、ネット上で見つけた修理してくれる人にお願いした次第。
これ以上いじっても悪化させる未来しか見えないので。
電源が修理から帰ってきて、とりあえず仮組みしてみたところ、フロッピーを入れてくださいの画面が出てきたので、この時点ではまだマザボが生きている模様。
コンデンサ類は液漏れしてはいないけど、30年前のシロモノなので、交換できるときにしておいた方がいいだろうと思い、こちらも全交換してしまうことにした。
基板はすでに両面になっているので、ハンダ吸い取り機でコンデンサを外していく。
メイン基板とビデオ基板だけならなんとかなるけど、サブ基板は30個以上コンデンサが付いているので、電動吸い取り機無しではやりたくない…
2日かけて全部のコンデンサを交換した。
FDDにもいくつか付いていたが、こちらは片面基板なのでそれほど難しくはない。
ただし、ホイールが乗ってる基板にもいくつかコンデンサが付いていて、そっちは外すとドライブが死ぬ可能性があるので、見て見ぬふりをする。
(FDD分解のコツは、接着剤で固めてあるネジは絶対に触らない事。調整後に固めてある=一度外すと調整が必要になるということである)
コンデンサ交換後、さらに一日かけて組み立て。
仮組み時は適当に済ませていた、マザボの位置決めやシールド版の組み込みが予想以上にタイトで非常に手間取った。
「もう二度と分解したくないパソコン」殿堂入りである。(PowerBook2400c、PalmTop110が名を連ねる)
組み立て終了後、緊張の一瞬。
なにしろ、これで起動しなくなった場合、ようするにマザボのコンデンサ交換に失敗して破壊してるということだから。
スイッチを入れると、フロッピーディスクを読み込…
無情にもディスクははき出されたが、画面にはHuman.SYSのアドレスが異常です、というエラーメッセージが表示された。
レトロマックのフロッピーもそうだけど、エラーメッセージが表示されて大喜びするのは、レトロパソコンクラスタくらいなもんだろう…
使用したディスクは、昔弟がどこかのジャンク屋で買ったという、X68k用シムシティ。
本体持ってないのに買うなんてアホですかと言いたいところだけど、動作確認に非常に役に立った!
x68にはFDDが二つあるので、もう片方のドライブにシムシティをセット。
リセットボタンを押すと、ディスクが読み込まれタイトル画面が表示された。
少なくともこの時点で、ディスプレイ回り、フロッピーコントローラー回りは無事ということが解った。
しかし音が出ない。
サウンド回りの回路は、コンデンサが大量に使われていて、失敗する可能性が一番高い。
ボリュームをしばらくいじっていると、突然クラクションのような音が出た。
どうやら、x68k用シムシティは、タイトルBGMに相当するモノはないようだ。
しばらくそのままにしておくと、たまにクラクションや騒音のような効果音が再生された。
正常動作する本体が無いので、このゲームの本来の挙動が解らない。
ようつべあたりに、プレイ動画が上がってる事を期待して電源を切り、フロッピードライブの位置とジャンパ設定を入れ替えた。
起動する物理ドライブは変わらないので、片方のドライブが壊れているようだ。
ケーブル、マザボは大丈夫。(ただし交換するにしても、x68用FDDは一個で98Apの不動ジャンク品並の金額で取引されている…)
翌日、ようつべやニコニコを探してみるも、シムシティのタイトルだけなんていう動画はアップロードされていなかった。
かねてから準備しておいた方法でシムシティの挙動を見てみることにする。
準備するものは、シリアルポート付きWindows機。OSはXP以上ならなんでもいい。
ここでは、Vista入りのDynabook Satelliteを用意した。(Core Soloとかいう超マイナー石搭載)
シリアルクロスケーブル。
9ピンメスー25ピンオスのタイプ。
所有していないため、昔Age Of Empireのローカル対戦に使っていた9ピンインターリンクケーブルに、25ピンの変換アダプタを付けたものを用意した
型番にMの付いたPC-8801本体+キーボード。
FEなどのF付きモデルは2D専用なので、今回の作業には使えない。
オクで買ってレトロブライトしたPC-8801MCを用意。蛇足だがキーボードの方が高かった。
無料公開されているHuman68k3.02のディスクイメージとXDISK。
XDISKは8801にディスクイメージを送り込むフリーソフト。
導入法は書かないが気が向いたらまとめるかも。
XDISKはDOS用のソフトだが、別の人がXDISK Winというソフトを作ってくれているのでそれを利用させていただく。これが無ければ今回詰みだった。
フォーマット済み5インチ2HD フロッピーディスク。
新品未フォーマットディスクはなんでもいいのでフォーマットしておいた方がいいかも。
XDISKはPC-88用ディスクイメージを読み書きするソフトだけど、88用ディスクイメージというのは全部のセクタを吸い出して記録してる、ベタデータというヤツで、ファイルシステムの影響は受けない。
よって物理フォーマットさえ合っていれば、98だろうが88だろうが、68kだろうがプロテクトがかかってない限り書き戻し、吸い出しともにやり放題という訳だ。
というわけで、このセットを使って、x68kシステム起動ディスクを作り、ついでにシムシティを吸い出す。
Human68kのイメージはXDFという形式だが、幸い変換するツールがあるので、D88に変換する。変換ソフトの名前はVFIC。ググれば一瞬で出てくると思う。
D88に変換したら、USBメモリでシリアルポート対応PCへ持ち込む。
メインの機械にシリアルポートが付いてる場合は不要。企業向けデスクトップPCでは、割と最近の機種にも付いてる場合がある…何に使うの
あとはXDISKWinでディスクを書き込んで終了。
シムシティも吸い出ししておく。
シリアルケーブルでデータ転送する上に、Z80でデータ圧縮もしているらしく、2HDディスクを一枚書き終わるのに10分ほどかかった。
オンライン対戦ゲームで一戦出来るね…
書き込んだHuman68k3.02をXVIに差し込んで電源を入れると、無事コマンドプロンプトが表示された。
念のため、シムシティが起動しなかった方のドライブにも入れてみたが、結果は変わらず。
次にシムシティのディスクイメージをエミュレーターで起動してみた。
ド派手なタイトルBGMが再生されたらどうしようかと思ったが、SEがたまに再生されるだけのタイトルは正常な動作のようだ。
私は完全スーパーファミコン世代なので、任天堂SimCityのイメージをそうとう引っ張ってる。
メトロポリスのBGM、みんな覚えてるよね
起動しない方のフロッピードライブは、マウントしたディスクに汚れが付くことが発覚したため、分解して掃除した。
ヘッドをIPA綿棒で磨き、ディスクを押さえるパーツは取り外して拭いた。
よっぽどヘッドが汚れていたらしく、これだけで両方のドライブからHuman68kを起動出来るようになった。
ついにXVI君の完全復活を成し遂げた。
しかし、キーボード、マウスがなく操作が出来ないため、音源回りなどのチェックはまだ出来ない。
キーボードはレトロパソコンの例に漏れず非常に高いので、変換アダプタを買うつもり。
また、内部SCSIにSCSIエミュレーターやHDDを接続しようと思ったら、分岐付きのSCSIフラットケーブルと電源変換ケーブル、それにマウンタが必要。
メモリもゲームしかしないなら2MBで足りるだろうけど、増設しようと思ったら1万円以上かかる。
まあ中古品ではなく、同人ハードとはいえ新品が1万円台で手に入るのだから、非常に恵まれてると思うが…
下手なゲーミングPCより金がかかるな…